第12章 竜飛
シゲたちのマンションに着く。
ベルを鳴らすと真っ先に出てきたのはシゲだった。
顔が暗い。
「…中身、見ちまったのか…」
「すんません…データが破損してないか確認してたら…」
「そうか…気にするな…」
肩に手を置くと奥へ進む。
キッチンの扉が開いていて、中に誰か居るのが見えた。
鼻を啜る音が聞こえたから、そっと中に入った。
二宮に先に行くように促すと扉を閉めた。
「祐也」
「あ…総長…」
まぶたを腫らして、換気扇の下でタバコを吸いながら泣いている。
「どうした」
「い、いえ…すいません…」
タバコを揉み消して頭を下げた。
「思い出して…」
「…お前も見たのか?」
懐からタバコを取り出して火を着けた。
紫煙が換気扇に吸い込まれていく。
「はい…すんません…」
「いい。気にするな」
祐也はぽとりと一滴涙を落とした。
「ここで…殴られました…」
「え?」
「若頭が…まだ未成年でタバコふかしてた俺を殴ってくれたんです…」
「翔が?」
「はい…立派な大人になったら、いくらでも吸っていいって…俺、大人に怒られるの初めてだったんです…だから…」
「そうか…」
祐也の金髪の頭に手を置くと引き寄せた。
「お前も翔のことが好きだったんだな…」