第12章 竜飛
「また…なんでだ…?お宅の若頭は消えたんだろう?」
「ああ…大人しくしてもらったぜ?」
「じゃあなんでいまさら公安に用があるんだ」
「あいつが流してるシャブが翼竜会に出回ってる」
「まあ、そうだろうな…」
「小杉が大人しくなったもんだから、どうもうちの組の他のもんに粉かけてるらしいんだ…やめさせたい」
「ほぉ…それほど翼竜会は成田にとって上客だってことか」
「そうなんじゃねえのか…?こっちは迷惑してんだ」
ぐいっと身を乗り出して遠藤を見据えた。
「うちはね…シャブご法度なんだよ…それを成田って奴にわかってもらわなきゃな…」
「あ、ああ…」
遠藤は目を逸らした。
マスターがコーヒーを運んできて俺達の間にカップを置いていく。
身体を起こしてカップを取ると、一口啜った。
今日のブレンドは苦味が強い。
「わかった…成田の顔が拝めりゃいいんだな…」
「ああ、後はこっちでやる」
「なんとかしよう。連絡する」
遠藤は伝票を持って立ちあがった。
「俺が払うよ」
「いいって。費用で落ちるんだ」
「あ、そ」
カランコロンと音がして遠藤が出て行くと、コーヒを飲み干して後に続いた。
「ごちそうさん」
「いつもありがとうございます」
「マスター、今日は煎りすぎだな」
「この季節はあれくらいがちょうどいいんです」
「…なるほど」