第11章 竜に翼を得たる如し
「おまえがこの件にこだわるのは、櫻井のためか?櫻井はお前のイロ(愛人)だったんだろ?」
「…だからどうした。それだけじゃねえ。大野の幹部、どんだけ殺られたと思ってんだ。おまえが指示したんだろうが」
「ああ…だがそれは、脅されてやったことだ。俺にはあんな抗争起きても得はねえからな…」
「誰に脅されてたんだよ」
「経産省の役人だ…」
「だからそれは誰だって言ってんだよ!」
「わからねえのか」
ボコボコに腫れた顔で、小杉はにやりと笑った。
「そこまで調べがついてんなら、わかるだろうが…」
頭がぐるぐる回ってくる。
「俺に最初声を掛けてきたのは、総務省のエネルギー庁の人間だった」
「エネルギー庁?」
「レアアースの情報を落としてきた。だから信用したんだ」
「…で?」
「エネ庁の人間の言うことなら間違いないと思った。だが、それは間違いだった。全部終わって、俺は踊らされてたことにきづいた」
ぺっと小杉は血まじりのタンを吐いた。
「エネ庁の人間は公安の成田を手足に使ってた。自分で振ってきたくせに、シャブと臓器のことサツにチクるぞと俺と松尾を脅してきた。だから抗争を仕掛けたんだ」