第11章 竜に翼を得たる如し
身支度する二宮の横で暫く放心していた。
横から手が伸びてきて、ぎゅっと手を握った。
「総長…」
「ああ」
二人で車を出て部屋に向かった。
室内は血なまぐさい臭いと、小杉のうめき声で満ちていた。
「どうだ」
「左手だけ終わりました」
「ん」
さっきは後ろ手に縛られていたが、今は身体の前で手首を縛られている。
もう逃げられないと判断したのか、足首の戒めは外されている。
「おい…足首、縛っとけよ」
「あ、はい…」
相葉がロープを持って足首を縛った。
小杉はぐったりとして動かない。
まだ目を閉じたままだ。
左瞼はタバコの焼けただれた痕がついていた。
周りには血まみれで肉のついた爪が落ちていた。
ひとつ、拾い上げてじっと眺める。
小杉の口をこじ開けて、それを放り込んだ。
「おい。小杉よ。言う気になったか?」
ぺっと爪を吐き出して、そのまま黙りこむ。
体中腫れ上がってもう人間には見えないけど、プライドだけはあるようだ。
「いい根性じゃねえか…」
小杉は俺をちらっと見上げると笑い出した。
「へ…へへっ…」
「なんだよ…」
「智、おめえやっぱりホモだろ?」
「…それがなんだよ」