第11章 竜に翼を得たる如し
小杉はぎゅっと目を閉じると、観念した顔をした。
「公安だ…」
それから小杉はなんでそうなったのか語りだした。
「経産省の役人が、会わせたいやつがいるって言うから会ってみたら、そいつがとんでもないやつだった…
親父のタマとって、総長になれば損失分を取り返せると…」
「それが外事の成田ってヤツか?」
「知ってるのか…そうだ。だけど、大野の若い衆が俺の周りをちょろちょろ嗅ぎまわってることがわかって、俺は怖くなって…
親父のタマ取ることなんざできねえって言ったら、じゃあ経産省の役人が臓器欲しがってるから、それを仲介しろと言ってきた」
「経産省の役人が欲しいと言ったんだな?」
「成田はそう言っていた。その時に、シャブの密売も持ちかけてきた。成田にはツテがあるから俺に売りさばけと言ってきた」
「その話に乗ったんだな」
「親父のタマとるくらいなら、そのくらいなんでもねえと思った。実際、親父は勘づいていたが、俺にはなにも言ってこなかった」
「…それはなんでだ?」
「さあ…俺が握ってるもんが、総長には表に出されちゃ困るもんだったんだろ」
「なんだよそりゃ…」
「お前のことだよ。智」
「俺のこと…?」