第11章 竜に翼を得たる如し
黙って小杉の前に写真を差し出すと、血まみれの小杉は目を見開いた。
「お…まえ…」
その写真は小杉の妻が写っていた。
「なんだってんだよ…そんなもん…」
なにも答えずに、ジャケットのポケットからライターを取り出した。
写真に火をつけると、そのまま手に持って燃えるのを待った。
「なんだよ…どういう意味だよ…」
写真が焼け落ちると、足で燃えカスを踏んで火を消した。
次にまた写真をダンボールから取り出した。
小杉の娘が写っている。
またそれを小杉に見せた。
「…なんだよ…だから、なんだってんだよそれが!」
ダンボールの中から、ステンレスの串を取り出した。
小杉に見えるように、裏から顔の位置に串を刺した。
「…やめろ…」
その写真を放り投げると、また一枚写真を取り出した。
今度は小杉の孫が写ってる。
その写真を床に放り投げると、ダンボールからサバイバルナイフを取り出した。
小杉の目の前に落ちているその写真を勢い良く突き刺した。
「やめろよ…こんなことしてなにになるんだ…」
床に貼り付いた写真をそのままに立ちあがった。
「小杉よ…大事なものを奪われるって、死ぬよりも辛いんだぞ…?お前、わかってんのか?」