第11章 竜に翼を得たる如し
板張りのキッチンを抜けると、奥は畳を剥がされた6畳間になっている。
雨戸を締めたきりの窓からは、陽光も差してこない。
そこに、猿ぐつわをされてロープで縛られた小杉が寝かされていた。
俺を見るなり目を剥いて暴れだした。
「おい…口、解いてやれ」
「はい」
草彅がぐいっと小杉の身体を起こすと、松本が駆け寄って一緒に身体を支えた。
草彅はそのまま小杉の身体を松本に預けると、猿ぐつわを解いた。
松本は小杉の身体を後ろのダンボールに押し付けて、一発顔を蹴りあげた。
「おい…」
そういうと松本は一歩下がった。
「久しぶりだな、小杉」
「智…てめえ…」
「なんでここにご招待されたか、わかってんだろ?」
「うるせえ…雑魚の分際で…」
「俺が雑魚なら、おまえはなんだっつーんだよ。ハマチかよ…」
「おまえは実力で総長になったんじゃねえんだ…」
「は?なんだって?」
「俺は知ってるんだ…」
そう言って血の滲む口角を上げて小杉は笑った。
「はは…てめえの力で総長にのしあがったと思ってんだろ。智、おめでてえなあ!」
小杉の顔を平手で殴り倒した。
「余計な口叩いてる暇、あると思ってんのか?小杉さんよお」