第11章 竜に翼を得たる如し
昼間でも鬱蒼と暗い神社の森を後ろに抱えるアパート。
他に入居者は居ない。
薄気味悪い場所だから、近隣にも住宅はない。
放置されたような倉庫や資材置き場があるだけだ。
アパートの前の砂利敷の広場に車を入れる。
「102号室です」
ドアのプレートを確認して部屋の呼び鈴を鳴らした。
ここは矢崎の息子を殺った部屋とは別の部屋だった。
前来た時は大野の若衆が居たが、今は誰もいない。
なんの前触れもなしに、ドアが内側から開いた。
「入ってください」
暗いものを抱えたような顔をした草彅が居た。
「ああ…よくやったな」
「ツラ、見てやってくださいよ」
ふっと笑って、奥へと進んでいった。
革靴のままあがりこむ。
その時、外で車の入ってくる音がした。
「二宮」
顎をしゃくると、二宮はドアに貼り付いてドアスコープを覗き込んだ。
「相葉と松本です」
「ち…あいつら…」
「どうしますか」
「来ちまったもん、しょうがねえだろ。入れろ」
黙って二宮はドアを開けた。
すぐに相葉と松本が部屋に入ってきた。
「てめえら…」
「すいません…エンコ詰めます」
「ばかやろう…何本あったって足りねえや」
そのまま奥に進んだ。