第11章 竜に翼を得たる如し
墓参りを済ませて大野の事務所に戻る途中、スマホが鳴り出した。
それは小杉のガラを確保したという連絡だった。
「…わかった。大野の事務所に車回してくれ」
そう言って通話を切ると、城島がこちらを見ていた。
「なにか…ありましたか…?」
「いいや…」
それ以上、城島はなにも聞いてこなかった。
事務所に着いて暫く経つと、二宮が迎えに来た。
帰り際、城島が手を握ってきた。
「ボン…無茶はだめです」
「…ああ…ありがとう」
手には紙が握らされた。
それを懐に入れて車に乗り込んだ。
大野の組員総出で俺を送り出してくれた。
「すぐ向かう」
運転席の二宮に言うと、だまって頷いた。
草彅の例のヤサまで、車内は無言だった。
いよいよ核心に迫ってきている。
そんな気がしていた。
胸ポケットに入れた紙は…多分、姐さんの番号だろう。
いつか…使う日がくるんだろうか…
「わりぃな…城島…」
いつもあいつの言うことは聞かなかった。
説教なんて聞かないし、取っ組み合いの喧嘩もした。
だけど…
小さい頃から側にいるのはあいつだけになってしまった。
「泣かせたかないんだけどなあ…」
「なんですか…?」
二宮がルームミラー越しにこちらを見ている。
「なんでもねえよ」