第11章 竜に翼を得たる如し
「総長、顔つきが変わりましたなぁ…」
「そうか…?」
「穏やかだ」
「おまえほどじゃねえよ…」
「はは…確かに…」
タバコを咥えて火を点けた。
「なあ…城島…」
「はい?」
「おまえ、景子姐さんの行き先知ってるか?」
「…なんかあったんですか?」
「いや…」
「あれから、なんの連絡もありませんよ」
「だよなあ…」
天井を見て煙を吐き出した。
もう極道の世界にはかかわらないと言っていた。
あの人は一度言い出したら、最後まで突き通す人だ。
今更なあ…
当時姐さんが持っていた携帯は解約されていた。
だから、連絡も何もできない。
だからといって調べるような真似はしたくなかった。
「携帯の…番号だけ知っています…」
「え…?」
「総長になんかあった時に…連絡をしろと…」
「…そうか…」
「なぜ連絡をしたいんですか」
「いいんだ…今は」
「総長…」
言っているうちに墓地に着いた。
ここに幹部たちの墓がある。
遺族たちがここにまとめて建てたのだ。
極道なんて、家族と縁を切っている奴が多い。
先祖からの墓なんてない。
「さ、行こうや…城島」
「はい…総長…」
よたよたしてるから腕を掴んで支えて歩いた。