第11章 竜に翼を得たる如し
次の日、喜多川の事務所にはいると、松岡を呼び出した。
「総長、なにかあったんで…?」
「ああ…すまないが、頼みたいことがあって…」
「なんでしょう」
「相葉、暫くこっちに付かせてくれねえか」
「…わかりました」
「すまねえな。若頭になったばかりなのに…」
「いえ…」
「智也、使ってくれ」
「え?」
「あいつもだいぶ落ち着いたろ?」
そういうと、松岡はぷっと笑った。
「ええ…だいぶ泡食ってるのは落ち着いたと思いますよ」
「だろ?だから手足に使えよ。俺からも言っておくから」
「わかりました…くっく…」
おかしそうに笑うと、真顔になった。
「総長、なんかやるのか」
「ん…ちょっとな、情報が入って…」
「どんな情報だ」
「まだ…確証がねえ…それをはっきりさせたい」
長部屋のソファに深く腰掛けた。
「それを握ってるのは小杉だ」
「総長…」
「後始末はこっちできっちりやる。小杉組の処分はおまえに任せるから」
「…智」
「ん?」
松岡からそんな呼び方されるのは久しぶりだった。
「おまえ、どうしたんだ…」
「え?」
「なんで笑ってるんだ…」
顎に手を遣ると、少し顔を触った。
「さあなあ…」