第11章 竜に翼を得たる如し
「今から話すことは、身内の恥さらしだ…まあ、アンタ達となあなあになってる俺が言えることじゃねえがな」
またタバコを深く吸い込んで吐き出した。
「公安の外事二課…ここはアジア関係やってるとこだ」
遠藤は警視庁内部のことを語り始めた。
「パワーバランスってやつがな。時々崩れると、それを直そうとする奴、壊そうとする奴が現れる」
「…だからなんだよ。まどろっこしい」
「まあ、聞けや…」
テーブルに手をつくと、爪でコツコツと面板を弾いた。
「外事の二課には魔物がいるって噂でな…」
「ああ…?」
「そのパワーバランスを常に壊してきた男がいる」
「…そいつが?」
「そいつは縦にも横にも…当たり前だがアジアにもパイプを持ってる。だから好き勝手やってる」
「例えばシャブを横流ししたり…?」
「そうだ。他にもそういう奴らはいるがな…あそこまで派手にやってるやつはいねえ…」
「なんでそいつは公安に居続けられる?」
「だから、さっき言ったお役人だよ」
「役人…」
「どんな関係かまでは掴みきれなかった。だが、そのパイプがあるから、奴はのうのうとしてやがる」
「ソイツの名前は?」
「成田…とまでしかわからない」