第11章 竜に翼を得たる如し
暫く小杉を泳がせている間に、遠藤から連絡が来た。
幹部会議の最中に鳴ったもんだから、すぐには喜多川を出ることができなかった。
密会は例の喫茶店を指定された。
例のごとく、一人で。
古びたドアを開けると、相変わらずカランコロンと鈴の音。
時間が遅いせいか、客は誰も居なかった。
今日はボックス席に座っている。
遠藤が手招きするから素直に向かいの席に座った。
マスターがすぐに注文を聞きに来てくれた。
ホットを頼むと、背もたれに凭れた。
「大丈夫なのかよ?」
「ああ…組対のお前へのマークは外れた」
「…だろうな」
「ありゃ、人身御供か?」
「いやだなあ…」
「まあ、いいけどな」
遠藤はタバコを取り出して火を着けた。
「公安の方はどうしたよ…まだウチをマークしてんじゃねえのか」
「ああ…一時的に解除になってる」
「なんでだよ」
「さあな…」
紫煙を横を向いて吹き出してから、俺の顔を見た。
「お宅、今、内部抗争してるのか?」
「…いいや…粛清だ」
「なるほどな…じゃあ、割って入らないことにする」
「社会を綺麗にするお手伝いですよ…」
「ありがたい」
俺もタバコを懐から出した。
火をつけると紫煙を吐き出す。
「公安、焚き付けてる奴な…お役人だぞ」
「え?どういうことだ」