第3章 取り残された竜
そのまま二宮の唇が、左肩の刺青をなぞる。
昨年入れたばかりの吉祥天。
二宮の肩にも同じ彫りがある。
そして、翔の背中にも…同じ彫りがあった。
「智さん…」
背中の毘沙門を二宮はそっと撫でた。
「俺はこの毘沙門のように、ずっとあなたを守りますから…」
「二宮…」
「吉祥天と一緒に…あなたを守ります」
そう言うと、肩の吉祥天に歯を立てた。
「痛っ…」
そして右の肩から胸に掛けて彫った青龍にまた唇を這わせた。
二宮の肩にもまた、同じ青龍が居る。
俺が昨年入れたものと、まるきり同じものを二宮は彫ってしまった。
それが二宮なりの、決意だったんだろう。
俺から、一生離れることはないという…
俺は二宮のシャツとジャケットを脱がすと背中を向けさせた。
そこには見事な騎龍観音が居る。
観音にキスをすると、二宮をベッドに寝かせて顔を見つめた。
「死ぬんじゃねえぞ…」
「それは…あなたが決めることです」
強い目で俺を見つめる二宮から目を逸らした。
「智さん…抱いて…」
二宮の白い腕が俺の首に巻き付いた。
引き寄せられてその白い首筋に顔を埋める。
俺は…こうやってお前で寂しさを埋めているんだ…
それでも、いいのか?