第11章 竜に翼を得たる如し
「親父は俺になんにも言わなかった…それは黙認するってことじゃあねえのか…それが親父の意志なら、お前らだって守らなきゃいけないんじゃねえのか」
「今のお前の頭は誰だ」
タバコを咥えると、二宮が火を点けてくれた。
「今の喜多川の総長は俺だ。ということは、お前の頭は俺だ。喜多川の親父が何を思ってお前を泳がせてたのか知らねえがな、俺は喜多川の綱領は遵守する」
松本が灰皿をテーブルに置いた。
「…それが、俺の…現総長の意志だ」
小杉は黙りこんだ。
「いいな」
会議室にいる全員が頷いた。
「新しい若頭には、松岡を指名する」
「お引き受け致します」
松岡が立ち上がり頭を下げた。
「こんな…若頭を降格って、こんな話があるか!」
「気に入らねえなら喜多川を出ろ。破門同然の野良ヤクザなんざどこも拾っちゃくれねえぞ」
「なんだと…」
「それとも…公安の連中にでも泣きつくか」
ガタンっと小杉が後ろのドアにぶつかった。
「あ?なんとか言えや…小杉」
「なんで…それを…」
「さあな…」
松本が小杉の腕を掴んだ。
「小杉さん…往生際が悪いですよ」
松本がドアを開けると、相葉が立っていた。
「相葉、入れ。松本は小杉に丁重にお帰りいただけ」
「わかりました」