第10章 夢路
「な…んで…?なんで…あいつは死んだの…?」
「智…」
「翔が殺したの?」
「違う…」
「じゃあなんでっ…」
「わからねえんだ!俺だって聞きてえよ!」
ビクッと智の身体が震えた。
「ごめん…本当にわからないんだ」
涙に濡れた頬を拭うと、智は俯いてしまった。
「俺が殺したの…?」
「違うから…」
「何人死んだ…?」
「え…?」
「西村組は…何人…死んだの…」
ぎゅっとバスローブを握りしめた。
「俺が殺したんだ…」
「智…」
智…これが極道ってもんだろう…
こんなに脆いのに…
なんであんたは…
背負おうとするんだ。
「智…俺は今まで3人殺してる」
智の手を掴んでぎゅっと握った。
「俺の手は汚いか」
ぶんぶんと首を振った。
「俺は…汚ねえか…?」
やっと智は顔を上げた。
「翔は…無意味に人を殺さない…」
その目に、何を映しているのか…
「今日は殺すつもりはなかっただろう…?」
「うん…」
「あれが誰のしわざか俺にもわからねえんだ」
智をまた抱きしめた。
「だから…智がなにも思う必要はない」
「なんで…?」
「いいんだ…それで…後は俺がやるから…」
「翔…」