第10章 夢路
『…わかった…信用する』
「誰が襲撃してきたのかはわからない。的も誰だったのかもわからない。とにかく、これはうちの仕事じゃねえ」
『ああ…あんたを信用する』
「すまねえ…」
『しょうがねえことさ…』
そう言って電話は切れた。
部屋を出ると二宮が心配そうに俺を見ていた。
「組長は?」
「まだ風呂に…」
急いで風呂に向うと、まだ松本と相葉が外に立っていた。
「組長はどうした」
「まだ中に…」
「ばかやろう…引きずり出せよ!」
風呂場の扉を開けると、組長は床に座り込んでいた。
「智っ…」
腕を引いて立ち上がらせると濡れるのも構わず抱き上げた。
そのままバスローブを身体にかけて、寝室へ連れて行った。
「いいかお前ら…誰も近づけるんじゃねえ…」
「わかりました…」
相葉が呟くように言うのを見て、寝室の扉を閉めた。
「智…」
棚からバスタオルを出して、身体を拭いた。
その間、魂が抜けたように智はされるがままでいた。
髪を拭いていると、智は泣き出した。
その肩を引き寄せて、力いっぱい俺は抱きしめた。
智の目の前で、人が死ぬのは初めてだった。
今まで俺が意識して遠ざけていた。
汚いことは全部俺が引き受けていた。
この人に、あんなもの見せたくなかったから…