第10章 夢路
「う…う…本当にしらねえんだよ…」
真っ暗な高架下。
蹲る西村の若頭は、組長の実の息子だ。
知らないわけがない。
「んなわけねーだろうが…」
組長が顎を持って顔を上げさせた。
「組長っ…車が来ますっ…」
二宮が叫んだ。
「ああ?」
組長が後ろを振り返った瞬間、車のライトが目に入った。
眩しさに目を閉じると、銃声が響き渡った。
車の急発進する音が聴こえる。
「なんだぁ…?」
ドサリ、西村の身体が倒れた。
「死んでる…」
相葉がつぶやいた。
西村は額から血を流して死んでいた。
「やばい…」
俺は組長を車まで引っ張っていった。
そのまま急いで車を出すと、大野の家に戻った。
「組長に血が飛び散ってるから、風呂入れろ」
相葉と松本に言って俺は自分の部屋に入った。
「二宮、誰も部屋にいれんなよ」
「分かりました」
小栗に電話を掛けた。
約束では…西村の若頭は生かしておく予定だった。
組長のタマはとってもいい。
だが、西村の若頭には松尾の娘と縁談がある。
だから、生かしておいて欲しいと言われていたのだ。
「もしもし…小栗か」
『あんたか…』
「いいか…俺が今からいうことに嘘偽りはねえ…」