第10章 夢路
城島さんを見舞う組長は、穏やかな顔をしていた。
「ボン…ちゃんと食べてますか?」
「お前は食い過ぎじゃねえか?」
「なっ…しょうがないでしょうが!食っちゃ寝しかできないんですから!」
「ぶはっ…顔まるいぞ!」
笑っていると、出逢った頃のように子供みたいな顔になる。
「…じゃあまた来るからな」
「そんな…俺のことより…」
「いいから。年寄りの心配くらいさせろや」
「なっ…俺はまだ50代っ…」
「じじじゃねえか」
「こんのー!クソ坊っちゃんめ!」
ドアを閉めながら組長は楽しそうに笑っていた。
「あれだけ元気なら大丈夫だな…義足、作ってやんないと…」
「…そうですね…」
廊下で松本と相葉が待っていた。
こいつらは、大野組の幹部に昇格する。
昨日からスーツを着せていた。
ダークスーツに身を包んだ二人は、極道の顔をしていた。
「二宮は?」
「今までの請求の会計をしています」
「ああ…あいつ気がつくな…」
下に降りて行くと車の前で二宮が待っていた。
二宮もダークスーツに身を包んでいる。
幹部が出揃った。
「お前ら…気合入れろ…」
組長が呟くと、空気が張り詰めた。
「ついて来いや…」