第3章 取り残された竜
俺の上に二宮を引き寄せて抱きしめる。
温かい人肌を感じて、ほっと息を吐く。
二宮も俺の身体に腕を回して、俺を抱きしめる。
「智…さん…」
二宮も…行き場所がない…
元々こいつは児童養護施設出身で。
大野組に来た頃は、世の中の全てを恨んでるような顔してた。
俺も何度もこいつとぶつかってケンカしたこともある。
ただ、俺から手を出すようなことはできなかった。
だって二宮は死にたがっていたから。
死にたいから極道の世界にはいってきた。
いっつも俺がボコボコに殴られてやってた。
まああの頃は二宮もへなちょこパンチしかできなかったから、全然痛くなかったけど。
ある日、二宮が俺を殴ってる所を翔に見つかって。
当然、二宮をボコボコにした。
それでもぶすくれていたんだが、翔が何かを囁いたら二宮は泣き崩れた。
何を言ったかは、未だに聞けてはいない。
だけど、それまで頑なだった二宮の心は一撃で砕けたみたいだった。
人が変わったみたいに大人しくなった二宮を庭のイスに座らせると、あいつの話を聞いてやったんだ。
二宮は、母親に性的な関係を強要されていた。
それは小学生の時からずっと続いていて、父親に気づかれるまで実に5年以上、歪んだ関係は続いたそうだ。
それが発覚した時、父親は二宮のことを殴ったそうだ。
二宮は、その時に父親も失ってしまったのだ。