第3章 取り残された竜
遠い意識で、家に着いたことがわかった。
相葉が俺を担いで寝室まで運んでくれる。
しばらく人の気配がしていたが、それもなくなると途端に寂しさが襲ってくる。
俺の親父が死んでからは、この家にはたった一人で住んでいる。母親は俺が小さいころに死んでしまった。
最近は雇っていたお手伝いも辞めさせて、身の回りのことは組の若衆にやらせているが、それでも一人になる瞬間というのはあって…
耐え切れず、目を閉じたまま手を伸ばす。
誰もいない隣には、かつて翔がいた。
俺が寂しさを感じると、いつでもここには…
翔が居たんだ…
なにもない空を掴むと、手をシーツの上に落とす。
「一人に…するな…」
ぎゅっとシーツを掴むと、眼の奥から溢れそうなものをぐっと堪える。
「俺を…一人にするな…」
その手の上に、温かなものが重なった。
驚いて目を開けると、そこには二宮が立っていた。
「ここに…居ます…」
「二宮…」
「だから…眠って下さい…組長…」
俺の手に重ねた手を、そっと握って二宮は笑った。
最近、張り詰めたような顔ばかりしているから、久しぶりに笑った顔を見た気がした。
「こいよ…」
手を引いた。