第10章 夢路
それから小栗と打ち合わせをした。
的にする組のこと、松尾と小杉の関係を断ち切ること…
そして、公安の事は心配ないこと。
小栗は若頭と言ってもどうやら俺と同じ立場のようで、手下は数えるほどしか持っていないようだった。
こいつも金だけで極道の世界を彷徨っているんだ…
電話を切ると、コトリとドアが開く音がした。
「若頭…」
組長がそこに立っていた。
「今日ずっと居なかったけど…なにしてた?」
「すいません…松尾組との一件、調べてました」
「まだなんか調べるようなことがあったのか?」
「ええ…ありますよそりゃ…」
部屋の中は暗い。
明るい廊下に立っている組長は逆光で表情が見えにくい。
「…俺になんか隠してないか…?」
「え…?」
「今日、喜多川行っただろ…なんだったんだよ」
「いえ…総長からちょっと」
「はあ?なんで親父が…」
「今回の一件のこと、聞かれました」
「え…」
「詳しく教えろと」
教えてもらったのは、俺の方だったがね…
まだ、言えない。
「そうか…小杉のこと、言ったのか…?」
「いえ」
「どこまで?」
「え?」
「親父はどこまで知ってた?」
「松尾組がどこかに踊らされてるってとこまで…」
「そっか…」
安心したような声音だった。