第10章 夢路
ぎゅっと唇を噛み締めた。
もう10年以上前のことなのに、鮮明にあの時の事が脳裏に蘇った。
今、俺には智という人がいる…
総長の言葉がある。
俺たちは、ここを乗り越えたら幸せになれるんだ。
ごめん…涼介…
本当に…ごめん…
腹の底から黒いものが湧き出てくる。
あの時の言葉…
あの時の涙…
思い出したら止めどなくどす黒くなっていく。
身体が震えてくる。
両手で抑えこむと椅子に座った。
誰かに操られるように、ファイルを開いた。
ブルーライトが眩しい
いつの間にか夜になっていた。
電気もつけていない。
真っ暗な部屋。
全てファイルを見終わった俺はただ、脱力していた。
「またか…また俺を…」
携帯が震えた。
画面を見ると、小栗からだった。
「もしもし…」
声が荒んでしまうのを止められない。
『…怖い声だすなよ』
「すまん。別件で荒れてるだけだ」
『そうか。あんたとは気が合うな』
「…あんたも嫌なことがあったのか」
『まあな…』
ふっとお互い笑うと、小栗は話を切り出した。
『あの話、通った』
「…わかった。明日から動く」
『根こそぎ持ってってもいい』
「そのつもりだ」
『…今度、飲もう』
「…いいぜ」