第10章 夢路
そのまま空いてるパソコンに、自分のノートパソコンをつなげてバックアップを取った。
これはいつもやってることだから、別段増田はなにも言わない。
「今日、シゲは?」
「もうすぐ来ると思いますよ?」
世界中の相場を見てるから、こいつらは交代でここに詰めてる。
今日はシゲが夜の番らしい。
データが更新されるのを待っていたら、慶に連れられて祐也が泣きながらリビングに入ってきた。
「若頭…しゅいましぇんでしたぁ…」
頬が腫れているので、上手くしゃべれないらしい。
ぶはっと俺が吹き出すと、慶も増田も笑い出した。
「うえええ…」
まだまだ甘ったれだが、仕事の腕は確かだ。
俺は祐也を引き寄せると、両腕を持った。
「俺はな、おめえが憎くてやってんじゃねえんだからな?」
「あい~…」
「立派な大人になれ…祐也。そしたらいくらでもモクっていいから」
「しゅましぇん~…」
皆で笑っていたら、リビングのドアが開いてシゲが入ってきた。
「なにしてんすか?」
メガネをずり上げながら不思議そうな顔をしてる。
「ま、いいってことよ…」
立ち上がるとシゲの肩に手を置いた。
「で、例の件どうだ?」