第10章 夢路
「やはり…お前は知っているんだな…?」
「いえ…まだ確証は掴めていません…おそらく、誰も」
「そうか…」
「総長はなんで…」
「これでも50年極道やってるんでな…道は色々ある」
やっぱり…敵わない…
この人にはなにも隠しておけない。
「申し訳ありません…俺のせいで…」
「なに言ってやがる…10年以上極道の水飲んでりゃ、お前はこっちの人間だよ。粉かけてきたのは、向こうさんだ」
「はい…」
「…お前はどうしたい?」
「できれば…誰にも知られず、始末を…」
「お前はそれでいいのか」
「それしかありません」
総長は俺の顔をじっと見た。
「…てめえで片つけるっていうんだな」
「はい…」
「…智に、黙っておくつもりか」
「はい…大野組長には…」
「お前らは一心同体ってやつじゃねえのか」
「え…」
思わず景子姐さんを振り返った。
姐さんは嫣然と笑った。
「総長には、なにも隠しちゃおけないよ」
「…はい…」
やっぱり敵わない…
「できればこの件が終わったら、足を洗いたい。そう思ってんだろ?」
姐さんに核心を突かれて動揺を隠せない。
「お前らが…小杉を嗅ぎまわってるのに気づいてな…調べさせてもらった」