第3章 取り残された竜
「でも、俺が組長になったら、好きにしていいってことだろ?」
帰り際、長瀬がそんなことを言った。
「な、何言ってんだよ…」
にやりと笑うと、手を振った。
「じゃあね?智兄…」
この度胸の良さを買ってるんだけど、時々とんでもない機転をきかせる…
大丈夫かな…こいつ…
喜多川の家を出て、車に揺られながら相葉に指示を出した。
「長瀬を大野の跡目にするから、そのように取り計らってくれ。まずは盃事だ」
「わかりました」
「城島に、全部任せていいから…あいつがこういうこと、一番よく知ってるから…」
「はい。わかりました」
「お前も勉強しとけ」
「はい」
車のシートに深く凭れた。
「ああ…疲れた…」
そっと相葉は俺にブランケットを掛けた。
「家までお休み下さい」
「寝れねーよ…」
「目を閉じているだけでも違いますから…」
そう言ってふっと笑った。
「しょうがねえなあ…」
目を閉じると、車の振動がやけに大きく感じた。
クタクタの身体には、それがやけに堪えて…
ああ…なんで俺は生きてるんだろうな…
暫くすると、眠気が襲ってきた。
そのまま、抗えなくて意識を手放した。