第10章 夢路
「なんだって…?どういうことなんだよ…」
「昨日、松尾のもんリンチして吐かせたんですがね。公安から先、どうやら経済産業省に繋がってる」
「えっ…」
一瞬目の前が暗くなった。
「なんだよ…?どうしたんだ?櫻井さん」
「い…いや…」
流れ落ちる汗を手の甲で拭った。
「経産省から先は…?」
「それはまだ。なにも」
「そうか…」
「理由はわからないが、どうやらそのお偉いさんがお宅の組を潰したがってる」
「…だろうな…」
「え?」
「いや…なんでもない」
じゃりっと革靴の下の地面が鳴った。
「…で?お前らは俺にどうして欲しいんだ?手打ちにしたいのか?」
「そりゃ、早期解決をしたい。だが、糸口がねえんだ…決定的な、な…」
「はっ…よく言うぜ」
俺は背を向けて歩き出した。
「…でも、その情報は助かった。解決の糸口を出せるかも知れねえ」
「良かったね。しゅんちゃん」
俺は後ろを振り返った。
「あんたは俺と同じ臭いがする」
「…ふ…あんたほど、世間に恨みは抱いちゃいねえよ…」
そういうと小栗は苦笑いした。
生田は俺にひらひらと手を振ると、また川の土手を降りていった。