第10章 夢路
酷く赤い夕焼けだった。
多摩川の鉄橋の下。
都心から車で一時間も掛かるような、こんな場所。
指定された場所に行ってみると、車が二台。
近くで二人の男が、川に向かって石を投げている。
部下を連れてくるなと言っただろうに…
用心しながら車を降りると、真っ黒なスーツに身を包んだメガネの男がこちらに手を降った。
その隣には青いジャケットを着た、細身の男。
「櫻井さんだな」
「ああ…あんたが小栗さんか」
「そうだ、こっちは警視庁捜査一課の生田だ」
「え…?サツの人間がなんでここに」
松尾組お抱えの警察の野郎だろう。
だが、なんでこんなとこに連れてくる必要がある。
「捜査一課って…なんでヤー公とつるんでんだ」
「あんたに言いたいことがあってな…」
「んだよ」
生田はにっこりと人のいい笑顔を見せた。
「そんなにとんがらないでくださいよ…お宅の小杉さんって人のことです」
「あ?なんだよ…」
「この小栗のとこの松尾組をけしかけてんのは、小杉ってひとだ」
「…ふうん…」
「へえ…もう知ってるって顔だね」
「だからなんだってんだよ。身内のことだ。口出すなや」
「小杉って人…警察内部の人間と繋がってんだよね…」
「え…?」