第10章 夢路
総長を弾くという情報が漏れたこと?
いいやそんなことで、ここまで大野を潰しにかかるわけがない。
だって大野はこの段になっても、喜多川にはなにも言っていないんだから…
なぜだ…
草彅の叔父貴に代わって、病院の手続きなどをして事務所に戻った。
叔父貴は疲れきっていて、そのままヤサに引き上げていった。
組長はまだ戻ってきていない。
二宮が心配そうに俺の傍に立っている。
「ああ…すまなかったな。留守任せて」
「…いえ…いいんです。俺ができることなら…」
その時、携帯に着信があった。
見慣れない番号。
少し用心して電話に出る。
「もしもし…」
『櫻井さんか』
「誰だ」
『小栗といいます』
「え…?」
『しっ…今回は俺個人で動いています。そちらも一人で動けますか?今回のこと、話したい』
「…信用できるか」
『するもしないもあんたの勝手だ。ただしチャンスはこれきりだ』
「…わかった…どうすればいい」
小栗はふたりきりで会いたいと言ってきた。
絶対に部下は連れて来てはならないと。
落ち合う場所を決めて、俺は事務所を出た。
「若頭…」
二宮が心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫だ。夜には大野の家に戻るから…組長にそう言っておいてくれ」