第10章 夢路
「若頭!襲撃です!」
顔を真っ青にした相葉が俺を見ている。
「誰がどこで狙撃された」
「草彅の叔父貴が…慎吾さんが…」
「え?なんで…」
「慎吾さんが…死んだそうです…」
長部屋のドアが開いていた。
組長はそこにただ、立っていた。
その目は、どこも見ていない。
透明になって飛び立って行きそうだった。
「草彅の叔父貴は無事なのか?」
「無事のようです。今、慎吾さんを収容した病院にいるそうです」
慌ただしく準備をして事務所を出る。
「組長!俺が見てきますから!」
「お前、病院行ってくれや。若頭」
「え?」
「俺は現場を見に行く。相葉、松本こいや」
「組長!」
「いいから…叔父貴の代わりに手続き頼む」
「…わかりました…」
現場に行けば、情報屋が屯しているだろう。
そいつらに金を握らせれば、相手のことも少しはわかる。
「俺も出張る。いいな?」
「ああ…叔父貴、助かるよ…」
松岡の叔父貴が行ってくれるなら、無理はしないだろう。
俺は頭を下げて事務所を飛び出した。
なぜ客分である草彅の叔父貴が狙われなきゃいけない…
きっと慎吾さんは弾除けになったんだ。
でも死ななくてもいい命…
なんでこんなことになる?