第10章 夢路
海辺の家から戻った組長と俺を待っていたのは、血塗られた道だった。
松尾組との抗争は激化し、それは喜多川一家や翼竜会にも飛び火した。
なんとか組同士の抗争に抑えたかったが、もうギリギリというところまで来ている。
大野組の幹部が大量に死んだことで、喜多川から助っ人が来ていた。
山口、国分、松岡の叔父貴たち。
そして長瀬が彼らの使いっ走りで来ている。
それぞれ日替わりで、部下を抱えてやってきた。
「叔父貴たちいいよ…こなくて…」
組長は戸惑いながら言ってみたけど、幹部を大量に喪った大野には彼らの力が必要だった。
「まあ、ゴルフの予約すっとばしたからよ…それだけ責任とってくれや」
松岡の叔父貴が唇をとんがらせていうから、組長は噴き出した。
「…おめえなぁ…下のもんに心配かけさすなや…」
「…ああ…」
叔父貴は俺の顔を見ていた。
「…俺は年中こんな顔なんです」
ぶっと吹き出すと、叔父貴は組長の顔を見た。
「いい若頭じゃねえか」
いたたまれなくなって長部屋を出たら、ちょうど事務所に電話が入っていた。
若衆頭の相葉が電話に出ている。
ちょっと屋上へでも行こうとしている背中に叫び声が聞こえた。