第9章 切迫の淵
「…で?総長は事実関係が全部わかったところで若頭をどうしたいんだ?」
「それは…俺が処分する。その前にな…若頭を解任したい」
「え…?」
国分が驚いて身を乗り出してくる。
「じわじわ生殺しにしてえんだ。そしたらあいつ気が小さいからゲロんじゃねえかと思ってな」
「総長…」
「まずは若頭を解任する。その後の調査次第で破門だな」
「ちょっとそりゃあ…」
「白波瀬にシャブ流してたのもあいつだ…あいつの側近、ほとんど染まってんぞ?」
「あ…」
「親父があれほど毛嫌いしてたシャブ、このまま喜多川に蔓延らせていいのか?」
東山が立ちあがった。
「よくねえな」
東山と近藤は執行部取締役の代表としてこの審議に出ている。
発言力はでかい。
この二人が諾と言えば、ほとんど決定だ。
「それはいいがよ…」
近藤も立ちあがった。
「小杉の後釜どうすんだ?俺は取締役から動きたくないぜ?」
「まあ俺も近藤と一緒だな…」
俺は会議室を見渡した。
立ち上がると窓辺に目を向けた。
ああ…龍が見える。
ここから立ち昇っていく。
「お前らさえ良ければ、松岡。お前に任せたい」