第9章 切迫の淵
シゲ達は、翔が死んでから調査をするのをやめさせていた。
彼らの身に危険が及ばないよう、相葉がそうしたのだ。
だから、シゲたちも核心には迫っていないはずだ…
それは今となってはいい判断だったと思っている。
俺達がちょっと動いただけで反応してくるやつらだ…
シゲ達の事がわかったら、なにしてくるか読めない。
…でも、時は迫ってきた。
ここで動かなかったらいつ動くんだという、絶好のタイミングに来ていた。
「おい…明日っから小杉をつつくぞ」
親父から総長就任を言われた時は、全面戦争も覚悟した。
若頭である小杉を乗り越えての出世だ。
それは俺が望むことではなかったが、親父の望んだことだから、拒絶することができなかった。
小杉は仕掛けてくるかと思ったが、チビって仕掛けてこなかった。
やっぱり…松尾組との抗争を焚き付けていたのは…
別にいる。
「わかりました…」
助手席の二宮がこちらをみた。
運転席の松本も頷いている。
相葉は気合を入れた顔をした。
「お前ら、身の回りには気をつけろ…なんかあったら承知しねえからな…」
「総長も、ね?」
相葉がめって顔をした。
子供か俺は…
「わーってますよ…ばあちゃんかお前は…」
かあちゃんから、ばあちゃんに進化した…