第9章 切迫の淵
「跳ねっ返りがやらかしたんじゃねえか…?」
「公安から組対に情報がながれたんじゃないんですか?」
「…もしも横流ししてる野郎がいたら、そんなことさせねえだろ…」
「絶対にバレない自信があるのだとしたら…?」
「うーん…」
「俺達をぶっ潰して終わりにしようとしてるんじゃないのか」
遠藤が立ちあがった。
「判断材料が少なすぎる。ちょっと深掘りしてみるから、お宅もなんかあったら連絡くれ」
俺の机に置いてある伝票をひったくって遠藤は清算を済ませた。
振り返りもしないでドアの向こうに消えていった。
ため息をついてコーヒーを飲み干した。
ちょっと冷めていたが、旨さは変わらなかった。
「どんな話だったんですか?」
「ああ…公安と組対が喜多川に貼り付いてるらしい」
「へえ…なんでまた」
相葉は運転しながらルームミラー越しに俺を見た。
「組対はシャブ絡みだそうだ。白波瀬の件じゃないとは思うが」
「…そうですか…」
白波瀬にシャブを流していたのは小杉だろう。
あいつはゲロっていかなかったけど、間違いないだろう。
白波瀬は小杉の側近だったのだから。
「やっかいですね…二宮の件といい…」
「ああ…」