第9章 切迫の淵
警察関係者には心を許してはいけない。
いつ寝首をかかれるかわからないからだ。
「とぼけんのかよ…公安がざわついてしょうがない」
「ふうん…」
「シャブ絡み…だな?」
「まあ…」
「お宅はシャブ厳禁じゃなかったのか?」
「そうですよ」
「…じゃあなんで…」
「遠藤さん…腹割りましょうか」
「…なんだよ…」
「公安でシャブを横流ししてる奴が居る」
「ほう…」
「迷惑してる」
「この前上がった仏さん…ありゃあ、お前のとこの幹部だったな?」
「…そういえば一人死にましたね」
「ありゃ…あれだろ…制裁だろ?」
コーヒーが運ばれてきて、俺達は無言になった。
一口飲むと、旨かった。
「旨い…」
「そうだろ…ここのマスターは焙煎からなにから一人でやってるんだ」
「すげえな…」
遠藤もコーヒーを啜った。
「公安から流れたシャブがお宅に出回ってるってことか?」
「ああ…」
「そうか…そりゃあ…」
暫く遠藤は無言になった。
なにか考えこんでる様子だ。
「公安がお宅を的にしてる。理由はわからない。んで組対(組織犯罪対策課)も動いてる。こっちはシャブ絡みだそうだ」
「うちは認めてませんがね…」