第9章 切迫の淵
喜多川に入ると、相葉と小杉に出迎えられる。
ここは親父が建てた、事務所兼住居になっている。
玄関を入ると右側が土足で入れる事務所、まっすぐ行くと靴を脱いで入る住居部分になる。
事務所に入ると、まっすぐに俺の長部屋に入る。
そこで小杉と相葉から一日のスケジュールとか、報告を聞くことになる。
「遠藤が…?」
「はい…会いたいと言ってきました」
「なんでだ…東山が組織図渡したんだろ?」
「その件じゃないようです」
とりあえず、今日は重要な面会もなかったから、連絡したら、いつでもいいと言う。
お互いの部下は置いてくるという条件で、街の喫茶店で会うことになった。
ドアを開けると、カランカランと鈴の音がする。
千人町にある古びた純喫茶で、ここのコーヒーは旨いからと遠藤が指定してきた。
相葉を車に待たせて、俺は一人で入った。
背中合わせの席で、お互い知らぬふりをしながら話をした。
「こんなとこまでご足労かけたな」
「いいえ…別に」
「まあ…あんたにとってはいい話じゃねえからな」
「なんですか?」
その時、マスターが注文を聞きに来た。
ホットを頼んで、また背もたれに凭れた。
「…おまえら、今何を探ってる」
「なんのことですか」