第9章 切迫の淵
その後…
二宮は泣いて泣いて手がつけられなかった。
ひとしきり泣いたあと、電池が切れたように寝てしまった。
嬉しかったのか…悲しかったのか…
それとも別の感情だったのか、俺にはわからない。
濡れたタオルで顔を拭ってやると、俺は部屋を出た。
ちょうど相葉と松本が到着したところだった。
リビングでは話が漏れる恐れがあったから、親父の書斎だったところに入った。
暫く使って居なかったから、埃っぽかったがまあしょうがない。
「どうしたんですか…?総長」
相葉が恐る恐ると言った体で聞いてくる。
「ん…相葉に話があってな」
俺はさっき草彅から聞いた話を聞かせた。
松本は草彅の下に居るから全部知っていた。
だから…最近様子が変だったんだ。
だから…あんなことしたんだ。
「じゃあ…小杉のバックには…公安がいて、更にまだ糸を引いている奴がいるってことですか…」
「まだ…そこまではわからねえ。草彅と松本が調べを進める。二宮もな…独自のルートで調べると言っている」
「…わかりました…俺は…」
「お前は若頭補佐として、小杉に貼り付いててくれ。大事な役目だ」
「はい…わかりました」
相葉の表情に緊張が走った。