第9章 切迫の淵
なにも答えない草彅の肩を掴んだ。
「悪かった…」
「あんたが心にでっけえ傷を負ってるのは知ってる…だがな…俺たちゃ生きてるんだ…生きて、見極めなきゃならねえんだ…なにが本当で…なにが嘘っぱちなのか…」
「ああ…」
「それが本当の弔いだろうが…」
「そうだな…言うとおりだ…」
懐からハンカチを取り出して、草彅に差し出す。
「…車で待ってる。墓参り行こうや…叔父貴…」
返事を聞かず、二宮に歩み寄る。
「悪かったな…車に戻ろう」
「総長…」
「大丈夫だ。心配すんな」
「でも…!」
「いいから…」
ぐいっと二宮の肩を引き寄せた。
「後で…抱かせろ」
そういうと、二宮は顔を歪めて泣くのをぐっと堪えた。
「うん…」
車に乗り込んで草彅を待っていると、5分ほどで戻ってきた。
「ハンカチ、洗って返します」
「女子かおめえ…」
「アイロンもちゃんとかけますよ」
「いいってそんな…」
「ラベンダーのポプリ包んでお返しします」
「ヤメレ…」
「ふっ…二宮、車だせや」
「はい…兄貴」
情けないことに、泣きそうなヤクザ三人で慎吾兄の墓に向かった。
慎吾兄、びっくりすんだろうなあ…