第9章 切迫の淵

「んだと…？」
「相葉も松本も二宮も…おめえに股開いてんのかって聞いてんだよ」
「てめえ…なんてこと…！」
「違うなら！」

肩を強い力で握られた。

「そんな情けねえツラ、晒すな」

何も言い返せなかった…
あいつらに…翔に甘えていたのはわかってた。
あの時は極道なんてやめたかった。
ただその一心だったけど…

今は、やめるつもりはない。
やめるのは…死ぬ時だ…

「じゃなきゃ…これ以上あんたに情報を上げるつもりはねえ。喜多川の幹部として、な」
「慎吾兄の弔いどうすんだよ…」
「そんなもん、鉛玉小杉に食らわせて終わりよ」
「草彅…」
「でもあんたのしたいのは、そんなことじゃねえだろうよ…なんで櫻井や…大野の幹部たちが命を落とすことになったのか、その真相が知りたいんじゃねえのかよ…？」

俺の目を、じっと逸らすことなく見続ける。

「俺は知りてえよ…なんで慎吾が死ななきゃならなかったか、な…土地の利権だなんてチンケな理由で死なれたんじゃ…」

草彅の目が赤くなった。

「あいつに…申し訳がたたねえ…」

そのまま俯いてしまった草彅の顔から、ぽたりと一粒涙が落ちていった。

「…悪かった…草彅…」