第9章 切迫の淵
「公…安…?」
「俺を狙撃したのも…その可能性があります…」
二宮が前を見たまま呟いた。
「小杉が繋がっているのが公安の連中だって言うのか…」
「…松尾組の若頭、覚えてるか?小栗ってやつだ…」
「ああ…あいつでも確か…」
「死んだな…何年か前に」
「一緒に死んでいたのはサツの若いやつで…警視総監がなんとかってやつだろ…?」
「あの事件の真相は子供の臓器売買だ」
「だから…なんだよ…」
「あの陰にもう一つ真相が隠れていたとしたら?」
「…もう一つの真相…?」
「大人の、臓器売買…」
「は?」
「中国から…安く入ってくる臓器を売りさばいてる」
「小杉が?」
草彅は目を閉じた。
「小杉が仲介をしてる。だが、依頼元がわからない。警察内部で、公安が絡んでいることは確かだ」
「なんで…小杉が…」
「小杉がレアアースに手を出したきっかけ」
「あ…そういやなんで急に海外の投資なんか…あいつ国内でしかやってなかったはずだ」
「そして多大な損失を出した…だからシャブや臓器売買に手を出すようになった…それが仕組まれたことだとしたら…?」
一気に血液が戻ってきて沸騰した。
「あいつは…踊らされていただけってことか…!」
「だと、思います」