第9章 切迫の淵
「じゃあ…なんで翔が…」
「総長…!」
「なんで…?なんでだよ…」
「なにか…掴んだんじゃないでしょうかね…櫻井は…」
「…何を…」
「これだけ調べてもわからない依頼元だ。二宮、お前なんか掴んでんのか?」
「いえ…俺も公安まではなんとか繋げたんですが、その先が真っ暗ですね…」
手が震えだした。
翔は…なんで死ぬ必要があったんだ…
草彅がため息をついて俺の手を握った。
「だから…こうなるから、あんたには言えなかったんだ…」
「車…停めろ…」
息苦しい…すぐにでもここから出ないと窒息しそうだった。
路肩に車が停まると、すぐにドアを開けて外に出た。
小さな公園があったから、そこに足を踏み入れた。
「総長…」
草彅が後を追いかけてくる。
「すまねえ…墓参りは後日くる。行ってくれ」
「総長」
臓器…シャブ…そんなもののために…翔は命を落としたのか…
極道らしい金の稼ぎ方だが…糸を引いているのが警察の中にいるなんて…
「ぶっ殺してやる…」
ヤクザの世界にずかずか踏み込みこんで、荒らしやがって…
テメエ稼業の仁義に反することを平気でやりやがる。
殺してやる…小杉もろとも…
ぎりっと奥歯を噛み締めた。
鉄の味が、口の中に広がった。