第3章 取り残された竜
「姐さん…大野組はどうするんだよ…」
姐さんは相葉の方をちらりと見た。
「若頭に任せたらどうだい?」
「えっ…」
相葉は絶句した。
「姐さん…俺は…組長と…」
「ああ…わかってる。だけどそれ以外どうする?」
「城島さんが居ます」
「…城島には無理だ…」
城島は、俺の親父から組に仕えてくれてる古参だ。
そして、前の抗争の時の唯一の生き残りの古参だ。
だが…右足を失ってる。
「城島には荷が重いだろうよ…」
タバコに火を着けながら、姐さんは溜息を漏らした。
「智。アタシはあんたなら一家を取り仕切れると思ってる。だから言ってるんだ。総長の養子になって、跡を継ぐ。これが唯一の方法だ」
「姐さん…買いかぶりすぎだ…」
俺は…ちっぽけな男だよ。
俺が生きてるのは、ただひとつの目的のためなんだ。
それが達成できたら…後のことなんて知ったこっちゃねえんだ。
「…なんで小杉の叔父貴じゃだめなんだよ」
「そりゃあ…アンタが一番良く知ってるんじゃないんか?」
姐さんは俺の目の更に奥を見た。
やっぱり…知ってるんだな…
この分だと、親父も全部知ってるんだろう。
「東山の叔父貴でも、近藤の叔父貴でもいいじゃねえか…」