第3章 取り残された竜
喜多川一家の本拠地は、港区の一等地にある。
付近の住民が追いだそうと躍起になってるが、昔から居る一家は動かない。
住民運動のトップには適当に金をばらまいて、運動を激化させないようにしてる。
車を門に横づけて、俺と相葉はすぐに屋敷に入っていく。
セキュリティーは既に解除されていて、玄関につくと若衆が引き戸を開く。
「大野組長ごとうちゃーく!」
「お疲れ様でございまーす!」
奥に進んでいくと、今日は国分の叔父貴だけ居た。
「叔父貴…」
「智、今日はどうした」
「姐さんに呼ばれてるんで」
障子戸の前に座る叔父貴の前に正座すると、叔父貴は障子を少し開いた。
「姐さん…」
そう声を掛けると、中から姐さんが出てきた。
「ご苦労様、部屋に行こう」
そう言って着物の裾を直しながら、先に立って歩き始めた。
国分の叔父貴に頭を下げて、俺は後に続いた。
部屋に入ると、革張りのソファを指さされそこに座った。
相葉は部屋のドアの前で立っている。
姐さんはコーヒーを淹れて出してくれた。
「智、アンタこの喜多川の養子になりな」
「え?」
向かいのソファに座りながら、姐さんは嫣然と笑った。
「そうすりゃ、小杉の馬鹿も手出しできないだろ?」