第9章 切迫の淵
「バカな奴だ」
気が済んだからその場を離れると、一斉に白波瀬に幹部が飛びついてリンチが始まった。
佐藤の悲痛な声が聴こえるが、俺にはもう止められなかった。
「おい、相葉。酒」
「はい」
相葉が冷酒を注いでいく。
「あれ、終わったら教えろ」
そのままコップを持って広間を出た。
松本と草彅が後をついてくる。
広間の前には二宮が立っていた。
「総長。アレ、どうしときますか?」
東山が背中に話しかけてきた。
「死なない程度にやっとけ。後、白波瀬組は佐藤にやってくれ」
「わかりました。処分は白波瀬個人でいいですね」
「ああ。それでいい」
ちらりと小杉を見ると、青い顔をして部屋の隅で立っていた。
…もっと…ビビりやがれ…
広間を出て、姐さんの部屋に入ると、冷酒を煽った。
「総長、手…」
松本がシップを持ってくる。
「ああ…少し赤くなってるだけだ。気にすんな」
「総長、貼ったほうがいい」
草彅までそんなこと言う。
「ばーか。宴会終わるまで待てよ。かっこわりい」
「へえ…そういうの気にするんですね。意外」
「ばっかやろう…」
くすくす草彅が笑うから、なんとなく笑ってしまった。