第9章 切迫の淵
広間に宴会の準備が整う。
一番最後に座についた俺は、酒が注がれる前に立ちあがった。
一緒に東山、近藤も立ちあがる。
「皆、総長より話がある」
ざわざわしていた広間が静かになる。
俺は懐から紙を取り出し広げる。
「白波瀬傑…右の者、喜多川の仁義に反する所あり。よって喜多川一家を破門、極東翼竜会を除名処分とする」
一斉に広間がざわつく。
「…以上…喜多川一家総長喜多川智、極東翼竜会総裁喜多川智…」
白波瀬を見ると、ぶるぶる震えていた。
「白波瀬…なにか言うことはあるか?」
「俺がっ…なにしたって言うんだ!智!」
「へえ…俺のこと呼び捨てかよ。総長就任に文句があるなら、タマ取りに来いって言ったのに、なんでこねえんだよ」
「なんだとこの若造がっ…」
「文句も言う頭もねえから、こんなことになんだろうが」
「ぶっ殺してやるっ…」
白波瀬が懐に手を入れた途端、両サイドにいた幹部たちが跳びかかって抑えこむ。
「総長…」
東山と近藤がそっと俺を下がらせて前に立つ。
「白波瀬は、シャブの売買に手を染めていた。処分に異議のあるものはあるか?」
東山が言うと、ざわめいていた室内がシンとした。