第9章 切迫の淵
「俺は…お前がいいって言っただろ…?」
「でも…松本なら翔さんの代わりができます…俺は…あなたに抱かれるしかできない!」
「それでいい」
身体を離して、涙だらけの顔見た。
「俺は誰にも翔を求めちゃいねえよ…お前はお前だろ…?」
「…智…」
「それとも、俺にぶっこんでみるか?」
笑いながら言うと、少し微笑んだ。
「いいですよ…やってみましょうか…」
こいつは…母親のこと思い出して…
男として抱こうとすると、勃たなくなる。
だから、長い間こんな関係を続けてきたんだ。
「いいよ…でも今日は勘弁してくれよ?」
「…なんで…?」
「え?」
「今まで…そんなこと言わなかったのに…」
「そうか…?」
きっと…時が近づいてきてるから…
思い残すことがないよう、勝手に頭が働くのかもしれない。
だから松本も…あんなことしたのかも知れない。
誰も責められない…
「…一緒に…」
「…え?」
「なんでもない…」
頬を流れる涙を拭って、触れるだけのキスをした。
「四十九日が終わったら、お前俺の傍から離れるな…」
「え?どうしてですか…」
「いいから…ずっとだぞ」
「はい…」
嬉しそうに笑う和也をぎゅっと抱きしめた。
永遠なんて信じない。
けど…