第9章 切迫の淵
次の日、喜多川に戻った。
それから四十九日までの短い間は、そんなにすることがない。
幹部が時々訪れては相談事をして帰っていく。
親父だったら…そう思いながら、応えてやる。
一日、そんなことをしていたらすぐに時間が経っていく。
「少し、休む」
相葉は頷くと、俺の手を取った。
「姐さんの部屋で…休みますか?それとも寝室?」
「ベッドで寝ちまったら、起きねえもん」
「ですね」
ニッコリ笑うと、若衆に言いつけて姐さんの部屋にタオルケットとクッションを用意してくれた。
「二時間ほどしたら起こしにきましょうか?」
「ああ…頼む」
あの日から、翔の顔がちらついて離れない。
月明かりのなか、抱かれた時のことを思い出す。
あれほど翔に激しく抱かれたことはなかった。
なにが…そうさせたんだろう…
いつの間にか、ソファの上で眠っていた。
人の入ってくる気配で目を開けると、松本が佇んでた。
「…どうした?」
「いえ…ちょっと様子を見にきただけです」
「そうか…」
また目を閉じると、急に身体にずっしりと重みを感じた。
「松本…」
「すんません…このまま…」
「どうしたんだよ…おまえ…」
「すんません…」