第9章 切迫の淵
四十九日を待って動き出す算段を徐々に整えていく。
サツが絡んできてるから、少し厄介かもしれない。
でも俺達の目的は一つだ。
そのためには戦争になることも厭わない。
命が…なくなっても…
久しぶりに寝室に入った。
ここは翔が死んでから、自分の寝室にした場所だ。
翔と二人で過ごした部屋には、居られなかった。
今はその部屋は誰も使っていない。
俺は死んだ親父が使っていた寝室をそのまま使っている。
バサリとベッドの上にジャケットを置くと、窓辺に立つ。
ブラインドを引き上げて、庭を眺めた。
錦鯉の泳ぐ池は、俺が小さい頃から変わらずそこにある。
「龍なんて…ここには居ねえな…」
ぽっかりと空に月が浮いている。
今日は、満月。
その蒼い光をじっと眺めた。
「あっ…」
頭を締め付ける痛みが、急に襲ってきた。
まただ…暫く出ていなかったのに…
「あ…う…」
倒れこむようにベッドに身を投げ出す。
ジャケットが身体の下でぐしゃりと歪む。
「しょ…う…」
あの夜…
翔は俺を抱いた。
何を言っても翔は止めてくれなかった。
ひたすら無表情で俺のこと抱き続けた。
あの時の月と同じだった。
部屋が蒼く染まった。