第9章 切迫の淵
「シャブ…でしょ?叔父貴」
相葉が言うと、草彅は頷いた。
「松本が今調べてるけど、横流しされたものを売りさばいてるな…」
喜多川ではシャブはご法度。
影でこそこそしてるやつは居るだろうが、それだけは親父は戒めていた。
「どこから横流しされたものだ?」
松本はじっと俺の顔を見た。
「サツです」
「は…ここでもサツか…」
二宮を襲ったのもサツ。
矢崎の息子にチャカを流したのもサツ。
そして、小杉にシャブを横流ししてんのもサツ。
「そこは俺が調べますから!」
二宮が急に大きな声を出した。
「あんだよ…急に…」
「あ…いえ…」
「お前は警察にマークされてんだ。下手に動くな」
「でも…」
なにか言いたそうな顔をしている。
「なんだよ…お前じゃないとなにかいけないのか?」
「いえ…そういうわけじゃないんです」
ぎゅっと口を引き結んで、二宮は黙りこくった。
こうなったら絶対に口を割らないから、俺は早々に諦めた。
「松本、できそうか?」
「はい…やります」
「じゃあ、草彅、頼むぞ」
「はい」
松本は床に目を落とした。
じっと何かを考えこむ顔…
こいつもなにか抱えてる。
一体なんだってんだ。