第9章 切迫の淵
一月ぶりに大野の家に帰った。
智也に組事務所は譲ったが、自宅はそのままにしていた。
大野の若衆は全て引き上げさせて、喜多川の若衆を相葉が入れてくれた。
リビングに入ると、松本と二宮と草彅が居た。
相葉が若衆に頷くと、台所に入っていって茶の準備をしているようだった。
「総長…もうすぐ四十九日ですね」
一人がけのソファに座ると、草彅がぽそりと呟く。
「ああ…そうだな」
タバコを咥えると、二宮がさっとライターを差し出す。
火を付けて吸い込むと、落ち着く。
「二宮、ブツは入ったか?」
「ええ…シノギ(稼ぎ)に使うブツも一緒です」
「わかった。それはさっさと売っぱらえ」
「わかりました」
とりあえずの資金を調達しておかないとな…
二宮は先取りして、そっちも手を回していてくれた。
「いい舎弟を持ったよ…俺は…」
若衆が茶を持って入ってきた。
ひとりひとりの前に置くと部屋を出て行く。
暫く誰も近づくなと相葉が言って、ドアを締めた。
「…小杉の動きは?」
「懲罰委員が入るかとビクビクしてますね…」
草彅もタバコを取り出した。
「ふうん…あいつまだ後ろ暗いことやってんのか」